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フッ素についてのQ&A

 歯科で用いるむし歯予防におけるフッ素については、まだまだ十分に理解されていないところがあり、様々な疑問・質問が寄せられています。 今回、平成8年度に佐世保市の公立幼稚園、保健主事会および養護教諭部会から出された「フッ素洗口に係る疑問点・問題点・意見集約資料」の中から、一部抜粋して新たに最新の情報を加え作成しています。
 フッ素を正しく応用することによって、むし歯は激減することは世界中で認められています。このQ&Aを参考にされて、正しいフッ素に対する理解を深めて頂きたいと思います。


 質問1〜20 質問21〜40 質問41〜60 質問61〜80 質問81〜 資料集

(質問1) 効果ある、ないと歯科医師の間でも分かれているのは、やはり問題があるのでは。

(回答)
 虫歯予防のためのフッ素利用については、学問的に既に安全性、有効性が十分確立され、内外の専門機関、専門団体が一致して認め、その利用について推奨しており、学会において賛否の論議はありません。
 しかしながら、現実にはフッ素の利用について反対論や反対運動があるのは事実です。ただし、推奨するに至る過程の中で反対論についても学術的に十分検討を行っています。
 例えばWHOでは、反対論について「…既に立証され、一般的に認められたフッ素利用の安全性に対する反対論は、特殊な条件、不完全な病歴、現症に関するあいまいな記載、あるいはデータの誤った分析及び解釈等に基調したものである。…」と分析しています。
 つまり、こうした反対論の根拠が誤った解釈によることが多く、世界の各専門団体・学会がフッ素を公衆衛生的な虫歯予防に用いられることを推奨している事実からも、広い観点で歯科保健、特にフッ素を利用した虫歯予防を考えてほしいと思います。

(質問2) 園児の場合飲み込むことがおおいに考えられるが飲み込んだ時の害は。

(回答)
 フッ素洗口後、洗口液を吐き出しても全体量の10〜15%の液が口の中に残ります。その中のフッ素の量は、毎日紅茶を1〜2杯飲んだときにとる量と同じです。 また、フッ素洗口液は、たとえ誤って全部飲み込んでしまった場合でも、まったく心配のないように安全な濃度の設定をしています。

(質問3) 長い間蓄積されて害がでてくるのでは。

(回答)
 体内に吸収されたフッ素の大部分は尿とともに体外に排泄されますが、身体に残ったフッ素は主に骨や歯に運ばれ利用されます。 フッ素洗口で口の中に残るフッ素の量は1日平均約0.1〜0.2mgであり、お茶1〜2杯に含まれるフッ素と同量という極めて微量です。実際には子供でも飲食物から1日1mg前後のフッ素を摂取しています。 したがって、フッ素洗口で骨や歯にフッ素が蓄積して異常を起こすなど、身体に害の起こる心配はありません。

(質問4) 歯が部分的に白くなるのでは。(はんじょうし)

(回答)
 斑状歯とは、顎の中で歯が作られている時期に、長期間継続して過量のフッ素を摂取した場合に起こるもので、歯の表面に白斑や白い縞模様が現れたものをいいますが、フッ素洗口でこの斑状歯が生ずることはありません。 その理由は、適切な洗口法によって口の中に残るフッ素の量は、斑状歯を起こすフッ素の量にはならないからです。
 また、洗口を開始する4歳では、顎の骨の中で既に歯の頭の部分のほとんどができてしまっており、このような一度作られた歯は、いくら過量のフッ素を作用させても、その色や形は変化しないことから、斑状歯ができることは理論的にも考えられません。

(質問5) 歯が白と黄色になるのでは。

(回答)
 フッ素洗口で歯が白・黄色・白斑・凹凸になることはありません。このような歯の色調や形態異常は、一般的によく見られ、この原因としては60種類以上あると言われています。 その中でも比較的多いのが、乳歯の外傷やひどい虫歯、歯の形成期中の熱性疾患や重症感染症の時の抗生物質の長期連用によるものです。その特徴は、歯全体が着色したり、形成不全になることもありますが、その多くは一部に限局しています。 また、虫歯になりはじめは、歯の表面のカルシウムが溶け出して歯が白くなることも多いのです。いずれにせよ、フッ素が原因で変色するのは、歯の形成期に長期間過量の摂取をした場合であり、フッ素洗口では起こりえません。

(質問6) 神経に害がでるのでは。

(回答)
 そんなことはありません。フッ素は自然環境物質であり、私たちは日常生活の中で飲食物とともに常に取り続けています。すなわち人体に必要な栄養素です。 もし神経に害があるとすれば、フッ素が多く含まれているお茶や魚介類は、すべて食べられなくなります。もちろんフッ素洗口で神経に害がでたという報告はありません。

(質問7) いいフッ素と悪いフッ素があるのでは。

(回答)
 同じ元素でも、結びつくもので、まったく性質が変わってしまいます。すなわち化合物によって性質が変わるので、フッ素も、フッ素化合物として論じなければなりません。 たとえば、フッ素も水素と化合すれば強酸のフッ化水素(HF)ですが、これに対して、フッ素洗口に使われるのは、安全なフッ化ナトリウム(NaF)が用いられます。
 また図のような塩素も結びつくものにより、強酸である塩酸になったり、私たちが毎日摂取している食塩になったりします。すなわち結びつくものにより、安全か危険かを判断することになります。 また、どんなに安全と思われている物質でも量がすぎれば害を生じることも忘れてはいけません。
 くり返しますが、フッ素洗口で使われているフッ化ナトリウムの量では、安全性に問題はありません。

(質問8) 奇形になるという話しを聞いたが。

(回答)
 水道水がフッ素化された地域でも、胎児に対する悪影響は報告されていません。また、フッ素洗口では、まったくそのようなことは考えられません。

(質問9) 真っ黒になるのでは。

(回答)
 フッ素洗口やフッ素塗布によって歯の色や形が変化することはあり得ないことであり、歯が黒くなるという心配はありません。
 歯科で用いている薬剤のひとつにフッ化ジアンミン銀(サホライド)という主に乳歯のむし歯の初期の段階で塗布し、その進行を抑制するものがあります。 歯が黒くなったというのはおそらくこの薬剤を塗ったためと考えられます。 (銀の作用で黒くなる)虫歯予防のためのフッ素塗布や洗口と、歯科医院で処置される虫歯を抑制する薬品の塗布とを混同して「フッ素で歯が黒くなる」と誤解することがあるようです。

(質問10) アレルギーの心配は。

(回答)
 嘔吐、腹痛、頭痛など様々な症状が、フッ素によるアレルギーではないかと心配されたことがありましたが、これらの症状はごく一般的な日常生活における種々の原因によっても引き起こされるものであり、その後の詳細な調査により、フッ素によるアレルギーの証拠はないと結論されています。

(質問11) 乳歯の段階で使い続けると丈夫になりすぎて永久歯がでてくる時にじゃまする可能性があるのでは。

(回答)
 そのようなことはありません。むしろ乳歯が虫歯にならなくて、丈夫になると言うことは、非常によいことではないでしょうか。 乳歯が早く虫歯になり、失われることによって、歯と歯の間が狭くなり、下から生えてくる永久歯がうまく出てこれないようになり、歯並びが悪くなることがよくあります。そういう意味からも、乳歯が丈夫になり、最後まで機能していることは大変良いことなのです。

(質問12) フッ素を使ったとしても結局虫歯になる。ならばあえて使わなくても。

(回答)
 ご指摘のように、フッ素洗口は30〜50%の予防効果であり、100%虫歯予防はできません。 しかし、安全で、経済的で、簡単で、日本ではまだ実施されていない水道水のフッ素化やフッ素の錠剤の服用などの全身的応用を除くと、現状ではもっとも予防効果の高い方法です。 ですから歯磨きや甘味制限その他の方法とも併用して100%の虫歯予防を目指して努力すべきだと考えますがどうでしょうか。
 また、虫歯になったことを、考えてみましょう。虫歯になった部分を金属やプラスティックなどで詰めたりします。しかし一度虫歯にかかったところは、弱いので詰めたところから再び悪くなる可能性が高く、元の健全な歯にはかないません。 ですから予防することが最も大切なのです。そのため、虫歯を減らす効果の高い、フッ素洗口を大いに利用することをすすめているのです。

(質問13) 薬品の管理に責任をもてるか。

(回答)
 現在、佐世保市においても、市内16カ所の保育所および幼稚園で実施しているのは、市販の家庭用のフッ素洗口剤(ミラノール)を使用しています。 一般の家庭でも使用しているものであり、担当の先生を決めてカゼ薬等の管理と同様に、鍵のかかる戸棚など子供たちが勝手に持ち出さないような保管をして頂ければ問題はありません。

(質問14) 今、学校や幼稚園で一斉に取り扱う必要があるのだろうか? 
学校週5日制も子どもを家庭に返そうという意味があるのでは。
予防注射も一斉に取り扱うことをやめたのでは。

(回答)
 佐世保市は、子供たちの虫歯に関しては、残念ながら、全国平均に比べてかなり悪いのが実状です。また、過去5年間の1歳6か月児や3歳児健診さらに保育所や幼稚園の歯科健診の集計結果からみても、その傾向は、変わらないようです。 したがって、この時期に簡単で、効果的な虫歯予防を行う必要性があります。そのためには、家庭で行う甘味の適正摂取や歯磨きの励行に加えて、子供たちが集団生活する保育所や幼稚園でみんなで一緒にできる虫歯予防を行うことも必要ではないでしょうか。
 フッ素洗口は経済的で、効果的であり、かつ安全性が高く、多数を対象に実施できることから、この時期にもっとも適した方法です。 家庭での実施もすすめていますが、途中で中断することが多く、保護者の熱意にだけに頼ることなく、未来のあるすべての子供たちの歯の健康のために、保育所や幼稚園で行うことが、もっとも良い方法だと考えています。

(質問15)
 フッ素の洗口の必要性があるのであれば、家庭にその必要性を強く啓発し、家庭の責任において自主的に意欲的に実施するようしむけるべきでは。

(回答)
 各家庭で虫歯予防をおこなうことはもちろん大切で、実際の歯みがきの習慣づけや甘い物の制限などは、親の責任のもとにされなければいけません。 しかし、虫歯はほかの病気と異なり、国民のほぼ全員にみられ、しかも一度虫歯になってしまうと自然に治らないこと、さらに虫歯になるのは子供の頃がほとんどであるという特徴があります。 このようなことから、公衆衛生的に全員の子供を管理することのできる、幼稚園、保育所、学校での虫歯予防活動を実践することが、効果的で必要なことになるのです。
 歯科医の処方による家庭でのフッ素洗口法は、特に熱心な一部の保護者を除いて、残念ながら長続きせず、あまり普及してないのが実状です。

(質問16)
 フッ素を使用するより、歯磨きの徹底を図ったり、食生活の改善、生活そのものの見直しを各家庭にしっかり啓発する方が先ではないか。

(回答)
 ご指摘のような家庭での歯磨きの徹底や食生活の改善は、確かに重要であり、今後もしっかり啓発する必要があります。 しかし、歯磨きや食生活の指導によりフッ化物の応用と同じくらいの効果的な虫歯予防ができたという報告はあまりなく、特に家庭においての従来から行われてきた歯磨きや甘味の適正摂取だけで地域の虫歯はなかなか減少しないのです。 そこで、より多くの人々の虫歯を効果的に減少させるための公衆衛生的手段として保育所や幼稚園および学校において、積極的なフッ化物の応用(フッ素洗口)をすすめているのです。

(質問17) フッ素洗口を希望する子どもとしない子どもがでると思われるが、その不平等などへの配慮が難しい。

(回答)
 フッ素洗口を開始する場合は、保護者の方に承諾を得ますが、どうしても希望されない家庭の子供には、フッ素洗口液を使わない真水で洗口するなどの配慮を行っています。 現在、佐世保市内の16カ所の保育所や幼稚園で実施していますが、幾つかの園では、わずかではありますが、希望されない方もおられますが、その家庭の子供たちへの不平等その他の問題は生じておりません。

(質問18) 指導者のいない園での実施は、事故ある時の責任はだれに。

(回答)
 フッ素洗口の安全性は十分に確立されており、仮に洗口液を全部飲み込んでしまっても安全なように処方されています。
 もちろんフッ素洗口の円滑な開始には、施設教職員、保護者、歯科医師・園医師等、関係者の事前の共通理解(コンセンサス)が不可欠なのは当然です。 その協議の中で個々の役割の分担と責任体制の確立をそれぞれの園の規模や実状等に応じて決めていくことが必要です。
 現実的には、先にも述べましたように、市販されている家庭用のフッ素洗口剤(ミラノール)を使用するので、安全で、ご心配されるような事故も起こりえません。 また、平成12年12月現在、佐世保市内においても市内16カ所の保育所および幼稚園で、合計1,562名以上の子供たちがフッ素洗口を行っておりますが、ご指摘のような問題も含めて、何も問題は起こっておりません。

(質問19) フッ素の安全性についてさまざまな説があり、戸惑うことが多い。

(回答)
フッ素の安全性を理解するためのポイントとして、新潟県歯科医師会が作成しているリーフレットの一部を掲載しておきます。

1)私たちの身近にあるフッ素

 フッ素は地球にある約100種類の元素のひとつで、量の多い順に元素を並べた場合、土壌中では18番目、海水中では12番目になります。 私たちの体もフッ素を構成元素のひとつとしており、人体に含まれるフッ素の割合は鉄よりも多いのです。

 ◇フッ素は必須栄養素のひとつ

 世界で多くの専門機関や学会がフッ素を必須栄養素としています。

WHO(世界保健機関)、FAO(国連の食品農業機関)、国際栄養学会、米国食料栄養庁、
米国全国科学アカデミー、FDA(米国食品医薬品局)、英国王立医学協会など

 私たちは、毎日食物から約1〜2mgのフッ素を取っています。さらに、飲料水から適量のフッ素が補われると虫歯予防に効果的です。

また、以下は「これからのむし歯予防」から一部引用しています。

2)フッ素洗口の安全性

 フッ素洗口後、洗口液を吐き出しても全体量の10〜15%の液が口の中に残ります。その中のフッ素の量は、毎日紅茶を1〜2杯飲んだときにとる量と同じです。誤って全部飲んだとしても全く心配はありません。

3)世界の専門機関が勧めるフッ素利用

 世界で150以上の科学や健康に関する専門団体がフッ素利用を推奨しています。

●世界保健機関(WHO)
●国際歯科連盟(FDI)
●食料農業機関(FAO)
●国際歯学研究学会(IADR)
●国際栄養学会
●英国王立医学協会
●欧州う蝕研究学会
●米国食料栄養庁
●米国全国科学アカデミー
●米国国立歯学研究所(NIDR)
●米国食品医薬局(FDA) 
●米国医師会
●厚生省
●文部省
●日本口腔衛生学会
●日本歯科医師会、米国歯科医師会はじめ世界93ヵ国の歯科医師会('84FDI)など

4)世界中に広まるフッ素利用

世界のフッ素利用状況

虫歯予防にフッ素を利用している国114か国

 水道水フッ素化 38
 フッ素洗口またはフッ素溶液で歯みがき 81
 フッ素塗布 84
 フッ素入り歯磨剤 97
 フッ素錠剤 67
 食塩にフッ素添加 22
               1991年 FDI 国際歯科連盟

※日本のフッ化物利用状況

1.フッ素洗口
   158,027人(32都道府県 1,183施設)[1992年3月日F調査]
   4〜5歳児の1%[小林清吾ほか:日本におけるフッ化物洗口法の実施状況(1992),口腔衛生学会雑誌,42,480-481,1989.]
2.フッ素塗布
    3歳児の36%,6歳児の40%,12歳児の29%[厚生省歯科疾患実態調査 134頁]
3.フッ化物配合歯磨剤
    35%

 なお、参考資料として「フッ素利用の国際的合意」と「フッ化物利用と歯科保健に関する近年の国内の動き」を以下に掲載致しますので、是非ご覧下さい。

フッ素利用の国際的合意

(1)世 界
1964年 国際歯科連盟(FDI) 第52回総会で推進決議。
1969年 世界保健機関(WHO) 第22回総会で実施勧告決議。日本も提案国となり賛成表明。
1970年 ヨーロッパう蝕研究会(ORCA) 推進表明。
1970年 世界保健機関(WHO) 「フッ素と人と健康」発刊。
1974年 世界保健機関(WHO)
食糧農業機関(FAO)
共同で「ヒトの必須栄養所要量に関する手引書」を発表。
1975年 世界保健機関(WHO) 第28回総会で再勧告決議。加盟148か国全会一致で採択。
1976年 英国王立医学協会 「フッ素と歯の健康」で推奨。
1978年 世界保健機関(WHO) 第31回総会で再々勧告決議。

(2)日 本
1949年 厚生省、文部省 「弗化ソーダ局所塗布実施要領」を発表。
1966年 厚生省 「弗化物歯面局所塗布実施要領」を発表。
1968年 厚生省 「弗化物溶液の洗口法によるむし歯予防」を発表
1971年 日本歯科医師会 「フッ化物に対する基本的見解」を発表。
1972年 口腔衛生学会 日本歯科医師会見解に対して全面的支持表明。
1974年 歯科保健問題懇談会 フッ化物応用について推進表明。
1977年
日本歯科医師会
「年少者のう蝕抑制のためのフッ化物応用についての考え方」を発表。
1978年
文部省
「児童う蝕抑制対策推進要綱」を発表。フッ素洗口を積極的に推進することを表明。
1982年
日本口腔衛生学会
「う蝕予防プログラムのためのフッ化物応用に対する見解」を発表。
1983年 日本口腔衛生学会 フッ素推奨を総会一致で可決。
1985年 国(内閣総理大臣) 「フッ素の安全性に関する答弁書」を提出。
1986年 日本口腔衛生学会 「集団を対象としたフッ化物局所応用マニュアル」発行。
1999年 日本歯科医師会 「フッ化物応用についての総合的な見解」
2000年 日本歯科医師会 「フッ化物応用(水道水へのフッ化物添加)に関する見解」

 

フッ化物利用と歯科保健に関する近年の国内の動き

1968年 厚生省が「弗化物溶液の洗口法によるむし歯予防」を発表。
1970年 新潟県弥彦小学校がフッ化物洗口を開始。
1971年 日本歯科医師会が「フッ化物に対する基本的見解」を発表。
1972年 日本口腔衛生学会が日本歯科医師会見解に対して全面的な支持を表明。
1978年 文部省が「小学校 歯の保健衛生の手引き」でフッ化物洗口の位置づけを確認。
1982年 日本口腔衛生学会・フッ素研究部が「う蝕予防プログラムのためのフッ化物応用に関する見解」を発表。
1983年 日本口腔衛生学会がフッ化物の推進を総会一致で可決。
1985年 日本口腔衛生学界・フッ素研究部が「フッ化物局所応用に関するガイドブック」を歯科保健専門家向けとして発行。
1985年 政府がフッ素の安全性に関する質問趣意書に対する答弁書を提出。
1985年 レンソン博士が先進工業国でフッ化物利用によりう蝕の減少したことを報告。
1986年 日本口腔衛生学会・フッ素研究部が「集団を対象としたフッ化物局所応用マニュアル」を教員や保母向けとして発行。
1989年 日本口腔衛生学会が文部大臣あてに勧告書「フッ化物応用によるう蝕予防推進事業について」を提出。
1990年 厚生省が冊子「幼児期における歯科保健指導の手引き」にてフッ化物洗口を推奨。
1990年 日本学校歯科医会がパンフレット「学校歯科保健とフッ素」を発行。

1992年

文部省が「小学校 歯の保健指導の手引き」改訂版を発行しフッ化物洗口の位置づけを再確認。
1992年 わが国で15万8千人の児童生徒が施設・学校単位のフッ化物洗口に参加している。

 

(質問20) フッ素先進県や先進校もあると聞くが、それでもなかなか広がっていかないのはなぜか。

(回答)
 フッ素先進県の新潟県では、行政、歯科医師会、大学関係者が一丸となった協力体制ができており、さらには25年間にわたる長い実績があるからです。 そのような体制が作られることは大変な労力を必要とします。つまり行政、歯科医師会、大学関係者が手に手をとりあい、なみなみならぬ決意と姿勢をもって取り組まないと、フッ素反対運動とあいまってなかなか物事がはかどりません。




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 質問1〜20 質問21〜40 質問41〜60 質問61〜80 質問81〜 資料集

(質問21) フッ素洗口には反対賛成があり、その中で行う価値があるのか。

(回答)
 フッ素洗口反対運動があり、「疑わしきは使用せず」と考えることは例えば現代のような車社会では車に乗れば事故が生じる可能性はゼロとは言えません。歩いていても車にぶつかる可能性もあります。 「疑わしきは使用せず」を日常生活にそのまま適用すると車に乗ることばかりか、歩くこともできなくなってしまうのです。 フッ素は適正な量で使用している限り、その安全性については、国の内外の専門機関・団体が一致して認めているところです。
 虫歯予防のワクチン等先が見えない現状で、もしフッ素利用以外の方法で効果的にむし歯の数を減らす有効な手段があれば別ですが、それがない現状ではフッ素洗口は行う価値があります。

(質問22) フッ素洗口についてはまず、保護者ではないのか。

(回答)
 各家庭で虫歯予防をおこなうことはもちろん大切で、実際の歯みがきの習慣づけや甘い物の制限などは、保護者の責任のもとになされなければいけません。 しかし、虫歯はほかの病気と異なり、国民のほぼ全員にみられ、しかも一度虫歯になってしまうと自然に治らないこと、さらに虫歯になるのは子供の頃がほとんどであるという特徴があります。 このようなことから、公衆衛生学的に全員の子供を把握することのできる、幼稚園・保育園・学校で虫歯予防活動を実践することが、効果的で必要なことになり、佐世保市全体の歯科保健の向上を考えていく上で大切なことなのです。
 そのためには、フッ素を使うことが最も簡単に行える方法であり、ことにこのフッ素洗口法は優れているといえます。 また歯科医の処方により、家庭でできるフッ素洗口法もありますが、残念ながら長続きしなかったり、している子としていない子の差がでてきたりするという欠点があるため、できれば集団で実施したいと考えています。

(質問23) フッ素の管理はどうするのか。

(回答)
実施施設での薬剤管理
 調剤者によって計量された市販のフッ素洗口剤(ミラノール)またはフッ化ナトリウムの入った広口ビンは鍵のかかる戸棚に保管し、管理を確実に行うことが必要です。 このとき広口ビンに順次番号をつけて薬剤出納簿を作成し、管理すると簡便かつ確実です。(なお、番号は広口ビン購入時に市が一括してつけてもよい)
 現場では養護教諭が中心に管理することになると思います。また実際時の対応は、その都度検討いたします。

(質問24) フッ素洗口に係る運用上の問題はどうするのか。

@ 時間

(回答)
 洗口の前日あるいは当日にポリタンクに洗口液を作ります。それを各クラス別にディスペンサー付きボトルに必要量を移します。 これは養護教諭がおこないます。各クラスでは配布されたディスペンサー付きボトルからひとりひとりの紙コップへ7 ずつ分注します。担当者の合図で一斉にぶくぶくうがいを1分間続けます。1分間がすぎたら、各人の紙コップに吐き出します。 紙コップ中に吐きだした洗口液はポリバケツにすて下水にながします。ポリタンク・ディスペンサー付きボトル・ポリバケツをよく水洗し乾燥させます。またゴミ袋に集めた使用後の紙コップは所定の場所で処分します。 洗口に要する時間は、慣れると洗口液分注から器具の後かたづけまで含めて全体で10〜15分ぐらいでできるようです。

A 場所

(回答) 各クラスで行います。

B 教育上の問題

(回答) どうしても希望しないという場合は、不平等にならないよう水で洗口させます。

C 薬品管理

(回答) フッ化ナトリウムの管理は調剤者(薬剤師・歯科医師)
実施施設での薬剤管理は5と同じ

D 責任問題

(回答)
 定められた実施手順に従って、フッ素洗口事業が実施されており、その中で万一有害作用が起こった場合(全く有り得ないことですが)は、他の公衆事業と同様、県及び実施主体である市のそれぞれの立場に応じた責任が生じてくることは当然ですが、 各関係者の役割を分担する中で、それぞれの責任体制も明確にする必要があると思います。

E 問い合わせ、もめ事の窓口は学校になるのではないか。

(回答)
 現実にはその可能性は考えられますが、それも内容によって責任問題と同様に事前に個々の役割を分担して、学校だけでなく、県・市歯科医師会、県・市福祉保健部、および大学等で対応することになると思います。

(質問25)
 WHO(『テクニカル・レポート846』1994)では、フッ素塗布は、
1) 歯科的矯正を行っているために高度にむし歯になりやすくなっている人。
2) レントゲン治療に伴って発生する口腔乾燥症のためにひどいむし歯が発生している人。
この2群の人達に特別に使用される技術とされ、一般的な局所療法から外されている。
また、同じくWHO(『テクニカル・レポート846』1994)では、「フッ素洗口は、6歳児未満のこどもには禁忌である」と明記されている。カナダでは、加えて6歳という年齢限界のほかに、6歳以上でも、中等度ないし、高度のむし歯のリスクがある者に限定している。
 こういう現況の中で、学校において、多数の児童にフッ素洗口の集団実施を行うなどということは、まさに時代に逆行していると思う。

(回答)
 WHOの虫歯予防におけるフッ化物の応用については、基本的には以前と同様で、その積極的な応用をすすめています。 上記の1994年のWHOの見解については、一部地域(特に米国を意識していると考えられる)では、水道水のフッ素化をしているのに加えて、フッ化物の錠剤の服用(これは歯科医師の処方による)、フッ素入りの歯磨き剤そして商品化されたフッ素洗口液などを重複して使用した場合には、 フッ素の過剰摂取による斑状歯(歯の表面が全体的に白く濁ってくる)が発症する可能性があるという注意を喚起したものです。 特に「6歳未満・・・」の記述については、そこだけをみると問題があるように受けとられますが、水道水がフッ素化されていたり、フッ化物の錠剤を服用してフッ素を補給しているところでは、フッ素洗口をする必要もないし、より安全のために6歳未満は禁忌という表現をしているようです。 日本では水道水のフッ素化も錠剤の服用もしていないので、WHOの見解から解釈して十分に管理された状態であれば、フッ素洗口は非常に効果的な方法だと考えられます。
 なお、上記の質問の内容がかなり誤解されて書かれているようなので、本文全体をお読みになりたい方は一世出版株式会社より定価2,000円で出版されていますので、かなり読みにくい訳本ですが、ぜひお読み下さい。 また、日本でのフッ素に関する研究をしている学者の集まりである学会は日本口腔衛生学会といいますが、その学会の中に『フッ化物応用研究委員会』(現在は『フッ化物検討委員会』)があり、上記のWHOの「6歳未満のフッ素洗口」のコメントに関する見解が出されていますので、これもぜひご一読下さい。

(質問26)
 フッ素の学校への導入は、時代の流れに逆行しているのではないかと思う。例えば、予防接種について言えば、今までの集団接種から個別接種に移行している。個人の接種に対する意志や責任、又、接種の際の予診を尽くすという点も重視されている。
 全く危険性がないということはないのだから、保護者の責任において、個人の健康状態・体質に応じて行うべきものだと思う。

(回答)
 すべての佐世保市民の方が、フッ化物の応用の是非をそれぞれが判断してくれるようになれば一番良いことと思いますが、現状では、歯に対する理解や認識はまだまだ十分ではありません。 現状のままで保護者(個人)の責任として片付けてしまえば、結局まだ自分で予防できない多くの子供たちが、結果として虫歯になってしまうのが実状です。虫歯は自然に治らず、進行するだけなので、特に予防が大切なのです。 またフッ化物を使用するのに最も効果的なのは、永久歯がはえはじめて、そろうまで(6歳〜12歳頃)が大切なので、少しでも多くの子供たちから虫歯を防ぐためには、現在のところ集団でのフッ素洗口が最も安全で、かつ効果的と考えられます。

(質問27)
 家庭においてフッ素を使用するならばフッ素に関して理解・納得済みのことだと思うのでいいが、学校で実施となると保護者はもちろん、職員の同意も必要となるので、現状では同意を得るのは難しい。 (年2回の歯科検診でさえ家庭に返すべき、とかブラッシング指導の時間も確保できない現状である。)

(回答)
 確かにそのとおりだと思います。しかしだからといって現状のままでは虫歯の現状は変わらないので、当面は全校でできなければ、各家庭での応用をすすめることもできるだろうし、また、歯磨きをしていない学校もかなりあるので、最初は昼食後の歯磨きやうがいの実施からはじめることが大切と思います。 各学校における歯科保健の取り組みにも、またかなり差があるようですので、個々の学校の実状に応じて、できることから始めることが必要と思います。 歯磨きやうがいも十分にやっているけれど虫歯がまだ多い学校では、フッ素洗口の実施を検討する(もちろん保護者も交えて)ことも考えていいのではないでしょうか。

(質問28)
歯科の開業医も多い。歯に熱心な保護者も多いので、予防接種と同じように保護者の責任で歯科医での個別実施が望ましいのではないか。
 また、安全性において1%でも不確かな点があるものを、集団の場で用いて何かあった場合、いったい誰が責任をとるのか。

(回答)
 本来ならば保護者の責任で個別実施で十分な成果が上がれば、それがベストだと思います。 しかしながら現状でも熱心な保護者の子供には虫歯がないか、あってもすぐに治療を受けるため軽症で済んでいるのに対し、あまり熱心でない保護者の子供たちには、予防が十分でなく、虫歯も重症化していることが多いのも事実です。 この現状をどう考えるかで、同じ未来のある子供なのに親の熱意の差によって大きな差がでてもいいのでしょうか。私たちは、毎日虫歯の治療をしながら「なぜ、こんなにひどくなる前に受診しなかったのだろう」と思うことが度々です。 そこで、このままではなかなか改善がみられないため、行政や関係団体の協力を得て少しでも積極的にかつすべての市民に平等に虫歯予防に取り組もうと考えているのです。
 また安全性については、特に問題はありませんが、責任については、実際に実施する場合の個々の関係者と協議を行い、それぞれの役割を分担すると同時に、責任体制もそれぞれの内容に応じて、明確にしておくことが必要だと思います。

(質問29)
 フッ素の効能は理解できるが、永久歯萌出期にあたる学童期に、一斉に洗口したいという考えで、安易に学校という場所を選定されては困る。
 学校は公教育の場であり、教育の場で長期的に薬液を使って洗口させることは避けるべきである。まして、うがい液の本体は劇薬であり、体内に蓄積するものであるということを考えれば、ほかの予防接種に準じた体制(個別実施)が必要である。

(回答)
 前述の質問にも通じることですが、各個人任せでは保護者の差によって同じ未来のある健全な子供たちの歯の健康に差がでてくることをどう考えるかだと思います。 私たちは、永久歯の虫歯予防に最も効果のある学童期に、できるだけすべての子供たちの虫歯を平等に予防したいと考えていますが、保護者や学校関係者をはじめ市民の多くの方が個人任せでよいという選択をするのであれば、それは致しかたないし、結果として今後も現状とあまり変わらない状態が続くと考えられます。 フッ素洗口をもし実施することになれば、薬剤の管理等を含めて関係者がすべて納得した体制づくりをした上で、実施するのは当然だと思います。

(質問30)
 学校では、薬を与えることはなるべく避けたいものであり、薬の使用でなく、ブラッシングやその他の指導をあてるべきで、フッ素の学校への導入は、学校の保健指導、保健管理の枠をこえている。

(回答)
 フッ素洗口をしなくても十分に虫歯予防ができれば、それがベストだと思いますが、現状では、ブラッシング等の指導だけでは十分に虫歯予防ができていないのが実状です。 また現在の学校保健法の主旨から考えて、積極的にフッ素洗口を実施することが学校の役割であり、子供たちの健康のために必要だと私たちは考えますが、どうでしょうか。
 なお、資料1.として学校保健法を加えておきます。

(質問31)
 学校という特殊な場所で実施すれば「誰も同じことを求めれれている」「学校が良いからしろと言っている」という、半強制的な面が必ず出てくるのではないか。

(回答)
 その可能性はあるかもしれませんので、やりたくない保護者や子供たちに対する自由な選択や、それによる差別や偏見は絶対に生じないように、事前の十分な説明や同意を得るようにしなければならないと思います。

(質問32)
 さまざまな個性を持った児童の集団の場である学校は、体格やうがい能力にも個人差がある。集団で行う場合、子供一人一人へ目が行き届かず、低学年の場合、誤って飲み込む子供もいると思う。
1回の量は微量であっても、長年続けることを考えると、単に予防効果があるというだけで導入するのはこわいことと思う。また、今の子供達を見ると安全に取り扱えるかどうか心配である。

(回答)
 誤飲を含めた安全性の問題と思いますが、当然私たちも効果があって安全性に問題のない方法で実施する予定です。 また子供が遊び半分にすることも考えられますが、これを機会に自分の健康は自分で守るという意識を育てるとともに、何事にも真剣に取り組むことを教えるいい機会になるようにしてはどうでしょうか。

(質問33)
 学校検診も予防を重視した検診に変わってきたので、専門医への受診・相談も治療だけでなく、積極的に予防を目的にした方向へ進んできていると思う。 体質・歯質・生活環境などそれぞれに違う子供たちである。その子にあった予防の方法を専門医と相談し、実施してほしい。

(回答)
 個人がそれぞれ行う歯の健康管理はもちろん大切であり、ぜひ実施してほしいと思いますが、フッ化物の正しい応用は、すべての子供たちに平等な虫歯予防に効果的なものであり、集団で応用する場合は個々の子供たちのリスクも考慮した上で濃度も考えられています。 個人の対応となると結果的に現状と変わらず、虫歯の多い子は多いままに、少ない子は少ないというように、保護者の歯に対する理解度によって子供の歯の健康に差ができたままになってしまいますが、それでいいのでしょうか。

(質問34)
 有効性や安全性の反面、有害性を唱える人もいる。フッ素の危険説がある中で実施するのは学校を混乱させるばかりである。

(回答)
 フッ化物については、量が多くなれば問題が生じるのは確かですが、現在学校でのフッ化物応用を考えているのは、虫歯予防に効果はあっても為害作用のない量での応用をすすめているのです。 また、フッ素洗口の安全性は十分に認められています。もちろんその実施にあたっては、学校関係者のみならず、保護者も含めた理解と合意の上で、学校が混乱しないように実施するのは当然のことと思います。

(質問35)
 公教育の場である学校で、保護者に対して、フッ素の有効性・安全性だけを伝え集団実施することは大いに問題がある。インフォームド・コンセントの意味から、保護者は有害性を唱える人からも十分な説明を受ける権利があると考える。

(回答)
 実施するにあたっては、保護者を含めた関係者の十分な理解を得た上で実施すべきと思います。また「有害性を唱える人の説明」とありますが、その方が全く事実を誤って理解していたり、事実を歪曲していることが多いので、専門家でない保護者の方がそのような説明を聞けばかえって混乱すると思います。 公教育の場ですから、やはりフッ素専門に研究されている大学の先生などから説明を受ける方が、片寄りがなく、より公平ではないでしょうか。

(質問36)
 1976年2月19日の文部省見解では、新潟県京ケ瀬小学校長・新潟市真砂小学校長の出しているフッ素推進の文書に対して、

・フッ素洗口の有害性、無害性が明らかでない現段階では、フッ素洗口を教科の学習と同じ学 校教育の一環と考えることは必ずしも妥当ではないと考える。
・同じく、フッ素洗口の有害性、無害性が明らかでない現段階では、学校当局がその実施を決定し、これを希望しない者は申し出るようにと父母に通知して洗口を推進するのは妥当ではない。

としている。

(回答)
 1976年より16年後の1992年(平成4年2月)に文部省より「小学校 歯の保健指導の手引」が出されていますが、その中(19ページ)に「虫歯予防のためにこのような方法としては、集団的にフッ化物の塗布を行うとか、フッ化物などによるうがいを行うとかがそれである。 このようなときには、十分専門的な理解をもった上で、適切な手順のもとで注意深く行わなければならない」と書かれています。これについては資料2.を参照下さい。

(質問37)
 学校でフッ素洗口をさせても、児童生徒の一人一人がむし歯予防に対する意識を持っていないと効果は上がらないと思う。
 フッ素洗口がその意識高揚につながるという考えもあるが、逆だと思う。(フッ素以外の)むし歯予防について十分に指導を行い、意識を高めた上で、フッ素を選択し、個人的に取り入れていくのが筋ではないかと思う。

(回答)
 基本的にはそのとおりだと考えます。ですから佐世保市内のすべての小学校に同時に実施することは混乱を招くだけなので、まず歯科保健教育を実施していないところはその実施から始めるべきであり、昼食後の歯磨きをしていない学校では、まず歯磨きから始めることが必要です。 ただし、十分な歯科保健活動を取り組んでいる学校で、全国に比べてまだ虫歯が多いところでは、フッ素洗口を集団で実施することを検討すべきではないでしょうか。なぜ集団でなければならないのかは、前述の質問でお答えしています。

(質問38)
 薬物を用いた予防は明らかに医療行為であり、歯科医師が保護者に対して説明をし、医療機関で歯科医師が個別に行うものであると思う。
 フッ素のむし歯予防への利用は、あくまで個人の自由の選択に委ねられるべきものであって、強制されるべきものではなく、学校での集団洗口には反対である。

(回答)
 WHOも述べているように虫歯予防に用いるフッ化物の応用は、地域や集団で応用することがより効果的であり、必要とされています。通常の医療行為とはかなり趣を異にしていると思います。 もちろん、薬剤を用いることでもあり、薬品の取扱いや安全性については、十分に配慮することは当然と思います。また別項でも述べましたように、強制ではなく個人の選択は守るべきと思います。
 資料3.のWHOの見解をご参照下さい。

(質問39)
 日本弁護士連合会(日弁連)は、フッ素応用の問題を人件擁護の観点から調査してほしいとの、東京都世田谷区の消費者団体からの申し立てを受理し調査を行った。そして、その結果、1981年に日弁連は、厚生省と各地方自治体に対して、問題点を指摘する意見書を下記の内容で提出している。

(1)事実上(フッ素洗口が)強制にわたる方法で実施されていること。
(2)専門家の指揮監督下で(劇薬の取扱いが)行われていないこと。
(3)フッ素に対する情報が公平に提供されていないこと。
(4)フッ素の)有効性・安全性についての追跡調査がまったく行われていないこと。

 学校でフッ素洗口を実施しようとすれば、上記のようなさまざまな問題点が浮上することは目に見えていると思う。

(回答)
 現在実施しているところで上記の4点が実行されていないとすれば、問題だと思います。佐世保市で実施する場合には、そのようなことがないように関係者との協議を十分に重ねて実行すべきと考えます。 (2)については、資料4.の政府の見解にそってしっかりとした体制をつくることが必要だと思います。また(4)の追跡調査をするためにも現在実施している歯科疾患の集計作業が今後さらにより重要になってきます。

(質問40)
 1989年11月10日、主婦連・日教組・都地消連・食生活改善普及会(新潟)・フッ素を考える新潟連絡会の代表と、粕谷参議院議員が文部省と日本歯科医師会に申し入れを行ったが、

『文部省』1989年11月10日 午後2時〜3時10分
石川健康教育課長、藤井課長補佐

・薬物の使用については、適正であれば問題はないと思う。ただし、この場合、無知に乗じての強制はやめるべきで、あくまでも受ける側の意思を尊重することが大切である。
・教育の問題として、健康教育を考えたとき、フッ素に頼るのは疑問である。それよりも、健康な生活習慣を身につけさせることが大切である。
・現在のフッ素洗口については推進しないが、やることまで妨げるものではない。
・洗口希望者が少ないところについては、フッ素洗口に限らず、教育全体において全員を画一化してきた弊害が出ている現在、学校教育活動の柔軟化のため、パーセントは問題にしたくない。

『日本歯科医師会』1989年11月10日 午前11時〜同45分

・10年前にフッ素に関する見解(注)を出しているが、それを強力におし進める動きは今のところない。
・疑問のあるフッ素洗口については、簡単に進めるつもりはない。それよりも、日本歯科医師会としては、高齢化社会の方に力を注いでいる。
・新潟県のなかには、フッ素洗口について何人か熱心な人がいると聞いているが、一方では、そういう人にブレーキをかけねばならないと言う人もいる。
・新潟県歯科医師会を指導していきたい。

(注)1977年「年少者のう蝕抑制のためのフッ化物応用についての考え方」のこと。

と回答しており、フッ素については消極的立場をとっているように思う。
また、『厚生省』寺松政府委員の予算委員会での国会答弁では

(1994年6月7日議事録より抜粋)
※ 濱田(健)分科員
文部省関係になってしまいますからもう言葉としては触れませんが、集団としてある町というか、個人の意思以外に集団としてこの弗素の洗口なり塗布をさせていくという方向性が仮にあるとすると、厚生省としてはその辺の見解はどうですか。
※ 寺松政府委員
私が先ほど申し上げましたように、強制的だとかあるいはそれを推奨するとかいうものではないと存じます。 やはりいろいろと成果を見ますと、集団的にこういう弗化物等を使った場合に、むし歯の数が少ないというデータがございますけれども、 これは個々人の人につきましては、それぞれの方の選択に任されるべきでございますから、やはりインフォームド・コンセントというのでしょうか、 十分内容を説明した上で投与を受けたいという方にしていくべきではないかと考えております。

と回答しており、フッ素推進の一方的な情報で「実施希望」の選択を保護者に与え、集団洗口を実施することは、厚生省の言う『十分な内容の説明』をしたとは言えないと思う。

(回答というよりも感想)
 政府(文部科学省・厚生労働省)も、現在のところ強力に推進しているとはいえないのは事実のように思います。 考えられることは、平成9年度から地域保健法が施行されましたが、厚生労働省でも歯科に限らず、在宅高齢者の問題にしてもすべて、それぞれの地域の実状に応じた保健福祉を企画立案し、実施しなさいという地域主体に変わってきているからではないでしょうか。 ですから新潟県のように歯科保健に力を入れている県(といっても年間予算は1億ぐらい)はそれなりの特色があっていいし、ほとんど歯については何もやっていない地域もあるようです。 長崎県では全国水準に比べると歯科保健が遅れているとして、平成7年度に「長崎県歯科保健大綱」を作成し、今後積極的に歯科保健に取り組もうとしています。 佐世保市でも同様で長崎県内各地に先駆けて平成8年度に「佐世保市歯科保健大綱」を作成し、平成11年度にはそれを具体化するための「基本計画」および「実施計画」が作成され、現在、取り組んでいるところです。 ですから最終的な選択の決断は市民を含めた佐世保市の考え方ではないでしょうか。
 また、日本歯科医師会は平成12年12月に「フッ化物応用(水道水へのフッ化物添加)に関する見解」を発表し、今までよりさらに一歩進んだフッ化物応用推進の姿勢を示しています。

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 質問1〜20 質問21〜40 質問41〜60 質問61〜80 質問81〜 資料集

(質問41)
 学校の洗口場の数や時間設定など、現場の現状を考えてほしい。
ある学校では、蛇口の数と生徒数を計算すると、約40人に1つということになる。蛇口が少ないため、全員が終わるのに何十分と時間を費やす可能性になる。 今のカリキュラムの中で、それだけの時間を確保するのは無理である。

(回答)
 口腔内清掃や歯周疾患予防に対する歯磨きの実施は食後30分以内の昼休みが理想ですが、児童・生徒と洗口場の数の問題から全校生徒一斉に行うのは小規模校以外不可能と思いますので、 中規模校・大規模校は学年もしくは学級を3〜4分割して(1学級40人として1回10人程度)にふりわけて歯磨きを行うといいのではないでしょうか。
 また、虫歯予防であるフッ素洗口を実施する場合は、洗口場は1学級に1つの水道があれば良く、フッ素洗口後に吐き出した排液や残留液はバケツなどの容器に一括して処分するといいと思います。

(質問42)
 昼休みの実施となると、昼休みは勤務時間外となるので、生徒について指導してもらうのは不可能である。かといって、昼休み以外に特別に時間を設けることはできない。 そうなると当然しない生徒は出てくる。(中学生ともなると、教師がみていないところでは、決まりを守らない生徒もいる。)

(回答)
 資料1.にある学校保健法(抄)の第1条に、学校においては児童・生徒および職員の健康の保持増進を図り・・、 第2条は健康診断、環境衛生検査、安全点検その他の保健又は安全に関する事項について計画を立て、これを実施しなければならない・・。そして第7条の項目に前条の健康診断の結果に基づき疾病の予防を行い・・以下中略とあります。
 昼休みが勤務時間外であるのなら、歯磨きの実施は各児童・生徒に行わせ、何事も真剣に取り組むことを教えるいい機会になるようにしてはどうでしょうか。 また、フッ素洗口については教師が授業内容の向上と児童・生徒へ歯科保健の重要性をより理解させ、週に15分程度の時間をつくることで、十分に実施できると考えています。

(質問43) フッ素は劇薬ということなので、学校で保管するには、不安が強い。

(回答)
 フッ素洗口剤としては「ミラノール」という厚生省認可剤を用いる方法と、フッ化ナトリウム試薬を用いる場合が考えられます。多量の保管は鍵つきの棚等で保管します。 例えば理科の実験で用いる薬品の管理をどうしているのかと同様に学校として考えることが必要です。
 フッ素洗口剤は粉末の状態では劇薬ですが、洗口液として水溶液になると劇薬ではなくなります。

(質問44)
 佐世保市の水事情が非常に悪い中、何万人の児童・生徒に集団洗口させると言うのは、節水と逆行したことにならないだろうか。

(回答)
 フッ素洗口に関して、児童・生徒の1人に必要なフッ素洗口液は7ccで1,000人が使用したとして水量を計算すると7Lです。佐世保市の児童・生徒25,000人で計算すると洗口に必要な水の量は175L(風呂桶 1.4杯分)です。このくらいの水は子供たちの歯の健康のために断水であろうとも確保できるはずと思いますがどうでしょうか。また、使用するコップは紙コップにすれば洗う必要もないと思います。

(質問45)
 コップの保管はどうするのか。
 一か所においた場合〜中学生は、男女一緒は嫌だとか、あの人のコップには近づけたくないなどのわがままがでる。(傷つく生徒もいて、いじめなどにつながる)
 個人で持たせる場合〜衛生面で好ましくない。整理整頓ができない生徒も多く、机の中もロッカーも非常に汚い。持ち物が濡れたり、かびの原因になる。

(回答)
 コップの管理がどうしても不可能であれば、紙コップを使用するといいと思います。
 実際に行う場合には、各学校の実状に応じて、個人のコップを使用するか、紙コップを使用するか検討すればいいのではないでしょうか。
 紙コップ使用の場合、フッ素洗口に使う紙コップ1つは 4.5円なので、児童・生徒が負担するとして、週1回法で年180円、毎日法で900円となります。

(質問46)
 長い間、フッ素洗口を同一場所で行った場合、環境への汚染はどの程度認められるか。また、その詳しいデータは存在するのか。

(回答)
 フッ素は単体としては存在することができないハロゲン属の元素で、天然界にもともと存在し、常に川の水の中や土中等から流出し、海へ流れこみます。
 ある物質が環境汚染物質として問題にされるのは、それが何かの理由で自然界に放出されたとき、それまで自然に含まれていた量が大きく変化する場合や、今まで自然界になかったものが人工的に放出されたために、生態系が何らかの影響を受ける場合です。
 現在の川の水は1〜4ppmのフッ素濃度です。例をあげると比較的フッ素含有量の少ない新潟県の信濃川の場合でも、自然の状態で1日に約5.5トン(5,500,000g)のフッ素が海へ流出しています。
 フッ素洗口の際に廃棄するフッ素量を25,000人で計算すると、一人7cc/回使用したとして、1日に
 週1回法では  5.41mg × 25,000人 = 135.25g
 週2回法では  2.41mg × 25,000人 =  60.25g
 毎日法では   1.46mg × 25,000人 =  36.5g
のフッ素が川に流れこむことになります。
 この量を比較してみると、フッ素洗口がいかにこの問題と関係ないかがわかるのではないでしょうか。

(質問47)
市が負担する場合
 それだけの予算が取れるなら、もっと基本的に学校教育において必要なものがあるので、そちらを優先すべきである。
保護者負担の場合
 教材費を払えず、不登校になった生徒もいる。教材費の保護者負担減を言われている現状に逆行することになる。

(回答)
 フッ化ナトリウムの試薬を使用した場合、週1回法では初年度一人144円、その際紙コップを使用すると一人180円加算され、ミラノールで毎日法を実施した場合は初年度一人756円、その際紙コップを使用すると一人900円加算されます。
 ただし、使用するフッ素の濃度、回数、薬剤の種類、方法で多少変わってきますので、具体的には個々の例で検討することが必要です。

@ 市が負担する場合

 25,000人では
    週1回法  初年度      3,600,000円
           (紙コップ使用  8,100,000円)
    毎日法   初年度     18,900,000円
           (紙コップ使用 41,400,000円)

A 保護者負担の場合

  週1回法でフッ化ナトリウム試薬使用の場合は
    初年度 144円/人  紙コップを含むと  324円/人
  毎日法でミラノール使用の場合は
    初年度 756円/人  紙コップを含むと1,656円/人

 因みに虫歯1本の治療費は2,500円以上(一部負担金は800円ぐらい)かかり、歯根の治療にまで虫歯が及ぶと20,000円(一部負担金は6,000円ぐらい)になります。

 少ない費用をかけて子供たちの健康な歯を維持する方が得か、虫歯になって多くの費用を使い、老後は入れ歯で苦労するのが得か、その選択は行政および市民にあると思います。 私たち歯科専門家は、もちろん予防に費用をかけて健康な歯を一人でも多くの市民の方が生涯保つことをすすめているのです。

(質問48) フッ素の代金の徴収、又、未納金への対応はどうするのか。

(回答)
 フッ素洗口と紙コップの代金の徴収、未納金は原則として市や学校が十分負担できる金額と思いますが、実際には関係者の協議により具体的な負担の方法を決めるといいと思います。

(質問49)
 子どもは、うがいを上手にできず、誤って飲み込むこともある。フッ素液を誤飲してしまい事故がと考えると、フッ素を扱うのはこわいと思う。

(回答)
 最もフッ素洗口の濃度が高いのは週1回法の洗口液中のフッ素量6.37mgですが、この量は安全で全量の6.37mg飲んだとしても全くの異常は認められず、2時間以内に70%以上体外に排出され、1.91mgのフッ素量が残留します。 しかし、人の1日に必要なフッ素量は2〜3mgとされ、6歳で体重が20kgだとしてもそのとき僅かにフッ素量が上昇するだけで、24時間以内にはほとんどのフッ素は排出され、体内の通常の至適フッ素濃度量にもどります。
 もしもフッ素洗口液を飲み込んだ児童・生徒に対して、その対処が気になるようでしたら、牛乳100ccを飲ませると即座に中和します。

(質問50)
 フッ素洗口は医療行為ではないか。もし、過失があった場合(例えば分量ミス、誤飲等)だれが責任を負うことになるのか。

(回答)
 医療行為とは治療やそれに基づく行為を行うことであり、学校でのフッ素洗口は集団による虫歯予防行為であり、医療とは異なります。 これについても資料4.の政府の見解をご参照下さい。
 平成3年度からの佐世保市歯科医師会が市教育委員会と実施している「歯牙疾患実態調査」からみても、虫歯はあまり減っていないことがわかります。虫歯の減少を他の何らかの方法で確実に行えればいいのですが、 現状のように学校での毎日の歯磨きの励行や学校歯科保健活動に日夜努力して改善を試みても、残念ながら目に見えて虫歯が減少していないのが事実です。 このような国民病とも言うべき虫歯は、疫学的観点から公衆衛生上フッ素洗口を主体とした積極的な予防対策をしていかなければ減少しないと考えられます。 つまり、フッ素洗口の学校への導入は児童・生徒の健康のために必要であり、疫学的見地で考えて頂きたいと思っています。

(質問51) 診察もなしに、数百人の児童・生徒に薬物を投与して、問題にならないか。

(回答)
 フッ素は自然環境物質であり、私たちは日常生活のなかで飲食物とともに常にフッ素を摂取しています。日頃飲食物から摂取するフッ素量は1mg程度ですが、毎日法のフッ素洗口時に口の中に残るフッ素量は1日平均で約0.2mgといった僅かな量です。 このように日常私たちはフッ素を摂取しているのですから、通常の生活を送れるかぎり、フッ素洗口を実施しても全く問題ありません。また、体の弱い子供や身障者が得にフッ素の影響を受けやすいという事実もありません。

(質問52)
 フッ素洗口を実施すると、ある程度の期間使用することになるので、いくら少量といっても、長期間にわたって摂取すれば、害が生じてくるのではないだろうか。 安全性や有効性が100%確認されるまで、学校(公教育の場)での使用は避けるべきだと考える。

(回答)
 実際に行う場合には、フッ素洗口液の15〜20%を飲むことを前提に、安全量を計算して濃度の設定を行っています。毎日法の場合でもこの量は、子供一人に不足する1日のフッ素必要量よりも少なく、安全性の問題はありません。

(質問53) アレルギー体質の子どもが、フッ素アレルギーを起こさないか、心配である。

(回答)
 フッ素洗口によるアレルギーは考えられないし、また過去にその報告もみられません。もともとフッ素は単体では存在せず、化合物として存在しています。 フッ素洗口にはフッ化ナトリウム〔NaF〕(フッ素とナトリウム)を使いますが、極めて安定した化合物であり、体内でフリーラジカル(活性型フッ素)や単体で存在することはなく、よって抗原抗体反応を引き起こす事はないのでアレルギーは起こりません。

(質問54)
 フッ素洗口を実施の方向ということであるが、有害・無害の論議が実際にある以上、どちらの意見も十分に出しあったり、資料を提示したりして、教師や保護者が自分の子どもにはどのようにするか選択できるようにして欲しい。

(回答)
 この点については、関係者には十分に資料を提供したつもりですが、まだまだ不十分なようですので、ご指摘のように十分検討できる資料をいつでも出せるようにしたいと考えています。 また、有害・無害論ですが、フッ素は過量であれば害があるが、適量であれば虫歯予防に効果があっても為害作用はありません。フッ素洗口に関しては、もちろん安全性を考えた量での実施ということは当然のことです。 また、保護者や子供で希望しない方に対しては、水で実施の予定です。

(質問55)
 フッ素という薬でしか、虫歯予防はできないのか。他の食物では摂取できないのか。

(回答)
 現在の食生活では、やはりフッ素の摂取量が不足しているのは事実のようです。 しかしながら水の補給はジュースはすべてやめて、フッ素が多く含まれているお茶にして、おやつは菓子類をやめてこれもフッ素の多い小魚を与えるということは、現実的には無理なのではないでしょうか。 もちろん食生活の改善の努力は必要であり、やるべきですが、それにすべてを頼るということは、現実的には家庭でフッ素洗口をしてもらう以上に困難ではないかと思いますがどうでしょうか。

(質問56)
 今、「薬害エイズ」の問題が大きく取り上げられているが、フッ素が「第2の薬害問題」として将来取り上げられるのでは?と心配。

(回答)
 「薬害エイズ」の問題は、本当に罪なき多くの人々を死に追いやることになり、私たちも早急にその対策を講ずるべきだと思います。 反面フッ素については、全く逆で、エイズでは米国の関係機関がその問題点を指摘していたにもかかわらず、その対応が遅れたのですが、 虫歯予防におけるフッ化物の応用については、数十年来、米国の関係機関はもとより、WHOをはじめとする専門機関、あるいは欧米の先進国でその効果が認められ、その普及が推進されています。 欧米では多くの子供たちが虫歯による歯の喪失(医療費が高いため治療するより抜くことが多い)から守られているという実状を近い将来に佐世保市民(国民)が知ったときには、 虫歯予防のためのフッ化物の応用が普及するのを妨げている人々や関係機関の責任が問われるのではないかと危惧しております。

(質問57) 慢性中毒と斑状歯の発生についてのデータを示して欲しい。

(回答)
 図示されたもの(新潟県歯科医師会作成)がありますので、ご参考にして下さい。

(質問58)
 妊娠中の使用が、ダウン症の出生率増加につながったということを聞いたが、全く安全なものだという保証があるのか。

(回答)
 水道水フッ素添加がなされている地域でも、胎児に対する悪影響は報告されていません。また、死産や新生児の死亡率が増えるという報告もありません。 仮に、母親が誤って大量のフッ素を飲み込んだとしても、血液や胎盤を経由するうちに胎児に移行するフッ素はごく少量になってしまいます。 それが証拠に、胎児期の歯の形成が行われている乳歯にはフッ素を原因とする斑状歯がほとんどみられません。
 永久歯の形成は生後間もなく始まりますから、赤ちゃんにとって母乳中のフッ素も重要です。しかし、母親が摂取するフッ素のほんの僅かしか母乳に移行しませんから、乳児に害を及ぼすことはありません。 むしろ母乳保育中の乳児は、フッ素が不足しがちでるあるといえます。

(質問59)
 医療機関で薬物を投与する際には、既往歴や体重を考慮にいれ最少の量で最も効果の得られる分量を決定されるが、フッ素の集団洗口で児童全員に同じ希釈のものを用いるというのはおかしいのではないか。

(回答)
 この点は水道水のフッ素化については、特に問題となると思いますが、フッ化物の洗口は基本的に薬物の投与(服用・注射)とは異なることはご理解いただけると思います。 子供の成長期にある歯に対する洗口液の作用については、同じ濃度でもほとんど差はないと考えられます。 また濃度設定については、虫歯予防効果があり、かつ安全性を考えた最も低い濃度を設定しているのが実状です。

(質問60)
 洗口用として認可されている医薬品は劇薬で、歯科医師の処方のもと蒸留水で希釈し、歯科衛生士が実施できると規定してある。つまり医療行為の範囲と考えらえる。劇物を予防薬に転用し、歯科医師不在の医療行為は問題がある。

(回答)
 この点については、政府の見解がでており、問題はありませんが、フッ化物の管理等については、当然のことながら関係者の協力体制をしっかりと作る必要があると思います。 参考までに政府の見解は『劇薬から劇薬でない医薬品を業として製造するには、薬事法に基づく製造業の許可が必要である。 しかし、学校の養護教諭がフッ化ナトリウムを含有する医薬品をその使用方法に従い、溶解、希釈する行為は、薬事法及び薬剤師法に抵触するものではない。』となっており、問題はありません。
 ※なお、フッ化物の安全性に対する政府の見解の全文も資料4.としてご参照下さい。

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 質問1〜20 質問21〜40 質問41〜60 質問61〜80 質問81〜 資料集

(質問61)
 洗口用のフッ素は微量であり、確実に希釈すれば安全で有効であるというのが推進派の先生方の意見のようだが、フッ素洗口の場合は一過性の副反応より、むしろその蓄積に問題があるように思う。

(回答)
 ご指摘のとおりで、実際に行う場合にはフッ素洗口液の15〜20%を飲むことを前提に、安全量を計算して濃度の設定を行っています。 毎日法の場合でも、この量は子供一人に不足する1日のフッ素必要量よりも少なく安全性の問題はありません。

(質問62)
 フッ素を水道水に加えた時最も抑制できたむし歯は発酵性酸触菌であり、抑制率はニュージーランドの例で、約90%であったという報告があるが、水道水のフッ素化が著効した国はすべて欧州や米国で、それらの国は歯炎だけでなく発酵性酸触症の多い地方と聞いている。 と同時に、日本に多い溝とくぼみの歯炎には効果が弱く、歯の間の歯炎に対する効果は中間とも記載されており、日本でいまだにフッ素の明らかな有効性を示すことができないのはこういうそれぞれの国の大地や民族間の差異を無視して導入した結果なのではないか。

(回答)
 人種間により歯の形態に差があるのは確かですが、例えば佐世保にも多い外国人と日本人の2世では、日本人と同様に虫歯も多いようです (ただし現在日本にいても過去に米国でフッ素化された水道水を飲んでいた子供の虫歯はほとんどなく、現在佐世保の米軍基地ではフッ素洗口をしているが、やはり虫歯は少ない)。
 逆に、日本人の子供でも米国のフッ素化されたところで育った子供には虫歯は少ないと考えられますが、現在そのデータをもっていないので、調べてみたいと思います。 それから溝とくぼみの虫歯については、日本に限らず米国でも、フッ素だけでは不十分で、シーラント(奥歯の溝とくぼみをプラスチックでコーティングする)を併用することが勧められており、これは日本でも同様です。 それに関する資料を以下に掲載します。

【シーラントのむし歯予防について】

 シーラントの効果については4ヶ年までの調査では、実施群はむし歯発生率が5.8%だったのに対し、非実施群83.9%と高率を示した。

 

データ提供:(財)ライオン歯科衛生研究所・目黒診療所
(昭和61年第一回小児歯科学会関東地方会より)

(質問64)
〈スウェーデン〉
 1951年、1都市で水道水フッ素化が行われる。市民が人権侵害と科学的根拠が薄弱であるとし、停止を求める訴訟を起こす。1961年、ストックホルムの最高裁は「水道水フッ素化を正当化する根拠はない」と判決を下し、中止される。
〈オランダ〉
 15都市で水道水フッ素化が行われていたが、1973年、首都アムステルダムでも実施されようとした際、市民から訴訟を提起され、最高裁は「水道水フッ素化は法的根拠がない」と判決し、その後、実施されていた15都市でも次第に中止された。
〈西ドイツ〉
 1カ所で行われていたが、1976年頃、中止される。
〈中国広州市〉
 18年間水道水フッ素化をし、子どもたち多数が重い斑状歯となったので1983年に中止した。 調査により、フッ素の多い土壌のために食品からのフッ素摂取量が3.7mgとアメリカの数倍も多かったことが明らかにされた。アメリカ歯学の1日摂取量を無視した「水道水1 F=至適濃度」という誤った「フッ素化戦略」の世界最大の犠牲国。
〈旧ソ連レニングラード市〉
 たぶん、中国からの情報により同じ頃に中止。
〈香港〉
 中国広州市で水道水フッ素化による斑状歯多発が論争されていたことと関連があると思われるが、1978年に中止。
上記のような国々で中止されているなか、どうして今から始めなければならないのか。

(回答)
 上記の中止の件は「水道水のフッ素化」についてであり、虫歯予防のためのフッ化物の応用の中止でないことをまず述べておきたいと思います。 スウェーデン、オランダともに以前は虫歯大国であったのに現在では激減しているのは、主にフッ素の錠剤の服用をはじめとするフッ素入り歯磨剤の普及等、フッ素の効果であることは明らかです。 日本では水道水のフッ素化も、フッ素の錠剤の服用も全く実施していないため、実施できるのはフッ素洗口とフッ素塗布、フッ素入り歯磨剤の使用とフッ素入り歯科材料の使用ですが、フッ素塗布とフッ素入り歯科材料の使用は歯科医院での実施となりますので、 集団や家庭で行えるのはフッ素洗口とフッ素入り歯磨剤の使用になります。現状では個々の歯科医院だけでの対応では大幅な虫歯予防は期待できないため、学校での集団応用を検討しているのです。

(質問65)
 フッ素は必須栄養素といわれているが、アメリカ公衆衛生局が1991年に発表した見解によると「フッ素または何らかのフッ素化合物が人間のホメオスターシス、または成長必須であるということに結論的な証拠は存在しない」となっている。

(回答)
 必須栄養素であるかどうかは、多少それぞれの機関によって判断が異なるようですが、適量のフッ素は、むし歯に対する抵抗性のある歯を作るとともに、正常な骨格を維持するためにも必要であるとされています。
 世界保健機関(WHO)や食糧農業機関(FAO)、アメリカ合衆国食品医薬品局(FDA)など多くの専門機関は、フッ素を身体の健康に欠かすことのできない必須栄養素であるとしています。
 また、アメリカ合衆国全国科学委員会は、フッ素の1日所要量を成人で3mgとしています。
 フッ素がなければ生命の維持にかかわるかどうかはともかく、丈夫な歯や骨格を形成するためには適量のフッ素は必要なのです。

(質問66)
 若い母親でダウン症児の発生が増加していることとフッ素の関係についてアメリカでは、最小母体中毒量を含め、いろいろな投与量によるフッ化物の生殖毒性に関する研究を行うこと。 フッ化物に遺伝毒性があるかどうか調べるために、さらに研究を実施すること。と勧告があっている。

(回答)
 常に様々な問題に対して研究し、調査することは大変重要なことであり、誰も反対する人はいないと思います。 ご指摘の点については、現在その問題はありません。 また、ダウン症については、1950年代の誤った論文のために現在でも間違った引用をされているようです。 その内容について述べてみると、
 1950年代に、ラパポートという人がアメリカのイリノリ州で調査を行い、「飲料水にフッ素が多く含まれる地域でのダウン症の発現が出生10万に対して72であり、 これはフッ素濃度の低い所の出生10万に対する24〜39と較べて高く、フッ素はダウン症の原因になる」と報告しました。
 しかし、これはお粗末な調査方法が指摘され、すでに否定されてしまった“論”なのです。 通常、ダウン症の調査は、地域の内科医、学校医、保健婦、ケースワーカー、その他から広く情報を集めて行われます。 このような慎重な調査によると、フッ素濃度の低いところでダウン症発現頻度は、出生10万に対して108〜190となっています。 ラパポートの報告“フッ素が多く含まれる地域でのダウン症の発現が出生10万に対して72”がいかに低い数字であるかがわかると思います。 後でわかったことですが、ラパポートは、出生児に病院で記録されたもののみを調べただけだったのです。 日本と同様に、アメリカにおいても里に帰って出産する例が多く、分娩した病院と生活してきた場所は異なることが多いのです。 
 この点からも病院のある地域の飲料水中のフッ素濃度と単純に関係づけることは誤った結論を導くことになります。 病院に保存されている出生記録を調べただけの調査は、あまりにもズサンであると言われているわけです。 この様な調査から得られた結果を母親の年齢でわける等の細かい分析をしても意味のないことはお分かりになるでしょう。 もちろん、フッ素濃度とダウン症の関係については、まともな調査が複数行われており、関係のないことが明らかにされています。

(質問67)
 以前から他県でもフッ素洗口が実施されているが、その後の追跡調査はなされているのか。またその報告など資料があれば見せていただきたい。

(回答)
 新潟県が20年以上前から実施していますので、主にそのデータを掲載いたします。
(日本歯科評論 591, 21世紀の歯学「日本のある現状から」 田村 卓也著 より引用)

弥彦小学校における学年別う蝕罹患者率、1人平均永久歯う歯数の推移
(1970年、1978年、1983年、1989年、1991年)
学年 弥彦小学校 全国平均
児童数 永久歯のう蝕有病者 1人平均永久歯のう歯数 1人平均う歯数
1970 1978 1983 1989 1991 1970 1978 1983 1989 1991 1970 1978 1983 1989 1991 1961 1987
1 101 120 131 124 110 33.7 25.8 2.3 7.8 0.9 0.55 0.38 0.04 0.08 0.01 0.69 0.41
2 85 92 107 131 114 50.6 47.9 23.4 6.9 17.5 1.11 0.88 0.36 0.09 0.18 1.54 1.01
3 88 115 124 110 121 79.6 59.1 34.7 23.6 15.7 1.75 1.22 0.66 0.40 0.26 2.33 1.83
4 104 97 119 140 133 85.6 58.8 42.9 28.6 21.8 2.42 1.45 0.80 0.46 0.35 2.93 2.67
5 108 130 114 138 113 93.5 76.2 57.0 30.4 28.3 3.39 2.01 1.25 0.51 0.58 3.36 3.43
6 127 108 127 107 138 85.8 83.3 75.6 46.7 42.8 3.68 2.38 2.24 0.89 0.72 3.78 3.73
全学年 613 662 722 750 729 72.8 58.8 41.6 23.1 22.0 2.27 1.39 0.89 0.40 0.36 2.44 2.18
1970年:フッ素洗口開始(小学校)
1978年:保育園でフッ素洗口開始
1983年:1〜4年;4歳から、5年;5歳から、6年;1年からフッ素洗口経験
1989年:シーラント処置開始
1991年:4歳からフッ素洗口+シーラント処置


フッ素洗口の継続

 1974年(昭和49)年から、村内全般でフッ素洗口をしている牧村では、20歳の1人平均むし歯本数は全国平均の半分以下となっている。

 

(1990年牧村20歳の歯科健診)

 

(質問68)
 推進派、反対派両者の意見が聞きたい。
歯科医師会は、「お互いの意見は平行線であるので会をもっても意味がない」と言われるが、片方の意見だけ聞いて導入はできない。 私たちは両方の意見を知った上で考え、判断できるし、またそうすることが大切だと思うので、けして無駄なことはないと思う。 フッ素を導入するにしても、「フッ素はいいと言われたから」といってフッ素の薬害等も知らずに参加する場合と、フッ素をよく知った上で自分で判断して参加する場合とでは、取り組み方にも差がでると思う。 前者は、保健意識の高揚にはつながらない。両方の意見は変わらないかもしれないが聞く価値はあると思う。

(回答)
 虫歯予防のためのフッ素利用の有効性と安全性については、内外の専門機関、専門団体が一致して認め、その利用について推奨しており、学会において賛否の論議はありません。 逆の言い方をすれば、もし学会でも賛否両論があれば、このように多くの責任ある専門機関、専門団体がフッ素利用を推奨することはないはずです。 また、推奨するに至る過程の中で反対論についても学術的に十分検討を行っています。 例えばWHOでは、反対論について「…既に立証され、一般的に認められたフッ素利用の安全性に対する反対論は、特殊な条件、不完全な病歴、現症に関するあいまいな記載、あるいはデータの誤った分析及び解釈等に基調したものである。…」と分析しています。

(質問69)
 「う歯の保有率を下げるため」という名目で、学校で行うのはおかしい。それならば、1才半検診、3才検診、成人検診などのおりに、市民レベル、県民レベルでの意識を向上させていくのが、本来の形ではないだろうか。

(回答)
 佐世保市歯科医師会は佐世保市の保健事業に協力して1才半健診、3才児健診、モデル地区成人歯科健診、その他の健診事業に従事しています。 当然その折には虫歯・歯周病の予防等に関して啓発活動を行っております。又、その他、デンタルフェスティバル、健康と福祉フェスティバル、学校歯科保健研修会、各種の表彰事業等でも意識の向上に努めております。
 以上の事業を行っている経験をふまえて、永久歯がはえる時期であり、虫歯の多発期であり、かつ高率に虫歯に罹患している児童生徒期に、安価・安全で最もその効果を大きくできる学校で行いたいと考えるのは当然のことと考えます。

(質問70)
 個人が主流になっている現在の医療方針の流れがあるので、「集団でやれば良い」という考え方はやめて、もう少し個人(各家庭)を尊重していくべきではないか。

(回答)
 各個人については歯科医院のレベルでその普及に努力しているところです。しかし考えて下さい。ほとんどの児童生徒が虫歯に罹患しているということを。個人個人の対応ではとても間に合わない、多くの目のいきとどかない子供達のことを考えて頂きたいと思います。

(質問71)
 県の歯科保健大綱は、フッ素を導入するために作成されたのではないかと思った。むし歯予防がそこまで重要ならば歯科医師会は、もっと各家庭や地域社会そして各学校に対して啓蒙すべきである。 特に学校に対しては、歯みがき時間の確保について校長会等へお願いしてもよかったのではないかと思う。むし歯予防イコールフッ素導入ではあまりにも短絡的すぎる。 フッ素についてすべての学者が副作用なしと言いきる日まで公教育の中では使うべきではないと思う。

(回答)
 虫歯予防のフッ素洗口法については、専門家集団である日本口腔衛生学会でその安全性は明言されています。 学会の見解を資料6.として加えておきますので、ぜひご覧下さい。 また、県の歯科保健大綱をじっくり読んでいただきたいと思います。今後の歯科保健の目標として非常に大切だと考えます。 虫歯予防については前にも述べておりますが、佐世保市歯科医師会として色々な形で努力してきているところです。ブラッシングについては、教育委員会そして養護教諭部会との協議会の折等にも口をすっぱくしてその必要性を訴えてきたつもりです。 虫歯予防にはその方法として原因別に、歯質の強化、甘味の制限、口腔内細菌の除去の3つの方法があり、これを組み合わせるのが最も効果的です。 その内の歯質の強化を目的としてフッ素洗口を行うわけです。その点を御理解下さい。何もフッ素のみにてすべてが解決するといっているわけではなく、おやつの摂り方、歯磨きも併用してこそ大きな効果が出るのです。

(質問72) 洗口中誤って飲み込んだとき、フッ素は胃の中でどのような反応を起こすのか。

(回答)
 胃の中では各種の緩衝作用を受け、試験中の反応のように一定のものではございません。水溶液の形で胃中に入ったフッ化物は速やかに胃壁より吸収され、血液中に入って各組織に運ばれます。大部分は24時間以内に尿中に排泄され、体外に出ます。

(質問73)
 県の歯科保健大綱の中で国も積極的な利用を推奨しているとあるが、この「国」というのは、厚生省のことであろうか。そうであるとしたら、文部省はどのように考えているのか。

(回答)
 わが国でも、昭和24年に既に厚生省と文部省の手でフッ素塗布実施要領が出されており、昭和43年には厚生省からフッ素洗口に関する小冊子も出されております。 また、昭和46年には日本歯科医師会が「フッ化物に対する基本的見解」を発表し、『現在、フッ化物応用にまさるう蝕予防手段の存在しない事実からして、フッ化物によるう蝕予防の推進こそが現時点における最良の方法であるといえよう』と結論づけています。 翌昭和47年には、口腔衛生学会がこの基本的見解に対し、学会として全面的な支持表明を行っています。その他、厚生大臣の諮問機関である歯科保健問題懇談会や日本学校歯科医会なども推奨しています。 さらに、昭和60年3月の国会でフッ素の安全性に関する質問書に対し、内閣総理大臣が問題はないという旨の答弁書を提出しています。
 このように、安全性、有効性が認められ、普遍的な定説になっているからこそ歯科医師国家試験で、フッ素の基礎知識から臨床応用まで多岐にわたり出題されているのです。
 厚生省については、資料7.の「幼児期における歯科保健指導の手引き」の抜粋を加えておきます。 厚生省関係では他にもフッ素に関してはたくさんありますが、この資料が一番分かりやすいと思います。 また文部省の見解については、先にもご紹介した資料2.の「小学校 歯の保健指導の手引き(改訂版)」をご覧下さい。

(質問74)
 行政でできる事、地域でできる事、保護者でできる事は、どんどん返していくべきである。
「学校」という公共の場を利用するだけでなく、公民館や、各種の検診会場などで、市民レベル、県民レベルで意識を向上させるところから、まず始めるべきではないか。

(回答)
 今回の歯科保健大綱の作成の意図は、虫歯予防のためのフッ化物の応用だけではなく、それは虫歯予防の様々な方法の一つにすぎません。ご指摘のように現在でも市民の意識改革も当然重要な柱の一つとして実施していますが、歯科疾患の特性として、
・自然治癒をせず、一方的に重症化する
・予防がかなりの部分可能であり、その方法もほぼ確立している
・虫歯と歯周病の予防は児童・生徒期が最も効果的である
 以上の理由のため、児童・生徒期の子供たちに集団で予防対策を実施することが、将来的にはより多くの市民の歯の健康に効果的であることを是非、ご理解願いたいと存じます。

(質問75)
 県の歯科保健大綱のP10に、
 ・1才6か月児のむし歯保有率は、 9.7%
 ・3才児のむし歯保有率は、 67.2% となっている。
学童期もだが、まず乳幼児期のむし歯予防対策の徹底が重要視されていかなければならないのではないだろうか。そのためには、妊産婦を含む母親たちへの指導をまず徹底してほしい。

(回答)
 ご指摘のとおりで、現在でも妊産婦指導、1才6カ月および3才児健診を保健所と協力して実施していますが、今回の大綱作成により、さらに出生前および乳幼児期の虫歯予防には効果的な対策を検討しています。 しかしながら現実には、歯は6才頃を境にしてすべて乳歯から永久歯に生え変わるという特徴を有しているため、乳歯で失敗した子供達や保護者にとっても、永久歯の交換のときにしっかり予防すれば、永久歯の虫歯にならなくてすむのです。 虫歯予防は複雑な要因が多くてなかなか難しいのですが、乳歯での経験を踏まえて、永久歯を健全に育てることは乳歯の虫歯予防以上に優先されるのではないでしょうか。

(質問76)
 う歯の考え方に疑問を感じる。未処置歯、喪失歯、処置歯もすべて含めてう歯と考えるのは、なぜだろうか。処置歯というのは、確かにう歯にはなったものの、処置の終わった歯であることを考えると疑問である。
(視力は、裸眼でも矯正でもAであればよしとする時代なのだから、う歯についても考え方を変えていってほしい。)

(回答)
 虫歯は自然治癒しないため、一度虫歯になるとその部分は削除して人工物におきかえますが、口の中はアイスクリームのような低温からお茶のような高温までの温度差と、1〜50kgの様々な方向からの咀嚼力が常に加わっている環境の中で、 数ミリ単位の人工物を永久的に維持することは現在のの科学ではまだ十分ではありません。 しかも、人工物と歯との接合面は常に2次的に虫歯になりやすい部位となっています。そのため一度でも虫歯になると、たとえ治療したとしても、将来喪失するリスクが高いということでカウントされているのです。

(質問77)
 保健指導全体を各学校の実態に応じて充実させ、あくまでもその一貫として歯科保健にも取り組んでいかなければ、時数、カリキュラムなどを考えたら、無理がくるのではないかと考えられる。

(回答)
 ご指摘のとおりだと思います。各学校の歯科保健に取り組んでいる内容によっては、まず健康教育から取り組むことや、歯磨きを定着させることから始めることが大切です。 個々の学校で、可能な限りの歯科保健対策を実施した結果、虫歯が減少しなければ、学校関係者の理解と納得と協力により、フッ素洗口の積極的な取り組みも検討してほしいと思います。

(質問78)
 学校職員全体への説明も希望する。(実施となれば、学校職員全部が関わってくることなので)

(回答) ご指摘のとおり、万全を期してする必要があると思います。

(質問79)
 事故が発生したときの責任、対処法など、もっと明確化していただきたい。例えば斑状歯がでた場合、昭和52年に新潟県歯科医師会がその著書で回答したように「フッ素によるものであると断定する事は、ほとんど不可能である。」と主張するだけなのだろうか。

(回答)
 実際にフッ素洗口を実施することになれば、関係者の役割分担や協力関係をしっかりと築くことが必要となります。その過程で学校の規模や関係者の係わり方によっても責任の明確化は当然はっきりさせておくことが、必要と考えられます。 それから斑状歯については、先の質問回答にもありますように、フッ素洗口による斑状歯の発生は考えられません。

(質問80)
 保護者に希望を取るといっても、「学校がいいからしろと言っている。」とか、「自分の子供だけしないというのは言いにくい。」など半強制的な面がでてくる心配があるし、フッ素洗口をする子供としない子供への配慮なども考えられているのだろうか。

(回答)
 ご指摘のように、したくない子供や保護者に無理やりさせないシステムをきちんと作ることが必要と思われます。現在行っている幼稚園等ではしない子供には水でうがいを同じようにさせていますが、そのような方法も含めて、関係者と検討したいと考えています。

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 質問1〜20 質問21〜40 質問41〜60 質問61〜80 質問81〜 資料集

(質問81)
 北松猪調小学校のデータを正確に知りたい。またなぜ中止になったのかという経緯も知りたい。

(回答)
 昭和60年から開始され、昭和63年に新たに赴任された校長先生の考えで中止されたと聞いております。なお、詳しいデータ等については資料5.をご参照下さい。

(質問82)
 歯科医師会の先生方がフッ素の話をされる時に、1969年にWHOにおける水道水フッ素化の決議と加盟各国になされた勧告などをフッ素の正当性の論拠とされているが、この勧告は、23か国の反対にあい、飲料水フッ素化を制限的に推奨できたに過ぎず、 それも住民集団の総意に任せるという決議を採択しているという事の説明も同時にされなければいけない。

(回答)
 水道水をフッ素化することは、残念ながら現在の日本では実施されていません。また諸外国でも、一度はある地域で水道水のフッ素化をしても、その後住民の意志で中止しているところもあります。 今後水道数のフッ素化についても議論が必要となってきますが、当面WHOも、虫歯予防に効果的であると推奨しているフッ化物の応用の中で、水道水のフッ素化とフッ化物の錠剤の服用のない日本(佐世保)では、 せめてフッ素洗口やフッ素入りの歯磨剤を用いて少しでも虫歯を予防しましょうとすすめているのです。

(質問83)
 歯科医師の先生方が、子供たちや親たちに、講話をされる時には、フッ素を夢の薬のように話すのをやめてほしい。

(回答)
 私たちはフッ化物の応用を虫歯予防の夢の薬のように話しているつもりは全くありませんが、これは恐らく受けとめ方の違いではないでしょうか。虫歯予防の講演をするときは、その予防方法として、
・定期的な歯科健診を受ける → 早期発見・早期治療のため
・規則正しい食生活をおくる → 虫歯菌の増加を防ぐため
・歯磨きやフロス(糸ようじ)を励行する → 虫歯菌や歯についた汚れを除くため
・奥歯の溝はシーラント(予防充填)を行う → 歯ブラシが届かない、深い溝の中を防ぐため
 以上4つに加えて、フッ化物の応用をすることを話していると思います。ただし、現状では上記4つに比べてフッ化物の応用が不十分なために、それを強調するあまり、質問のような受けとめられ方をされているのかもしれませんが、 欧米でフッ素を効果的に使用することにより、虫歯が激減しているのも事実であり、そういう意味からは現状では「夢の薬」と言えるかもしれません。

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 質問1〜20 質問21〜40 質問41〜60 質問61〜80 質問81〜 資料集


 上記は、平成8年2月に開催されました「佐世保市歯科保健大綱検討委員会」の教育委員会関係の分科会終了後に、公立幼稚園・保健主事会・養護教諭部会から提出されました「フッ素洗口に係る疑問点・問題点・意見」について、佐世保市歯科医師会として回答したものです。 ご質問等の回答を要約すると次のようになると考えられます。

  1. 虫歯予防における「フッ化物の応用」については、世界および日本の専門機関・団体がその効果を認め、その普及を推奨している。

  2. 虫歯予防における「フッ素洗口」の効果と安全性はすでに確立されている。

  3. 実際に「フッ素洗口」を園・学校で実施するためには、関係団体や関係者の十分な理解と協力のもとに、基本となるマニュアル作成を含めて、事前の協議を行い、それぞれの関係者の役割の分担および責任体制の確立をはかることが必要である。 また、個々の園・学校の実状に応じた柔軟な対応も考えなければならない。

  4. 「フッ素洗口」のみで虫歯を100%防げるわけではないので、個々の園・学校の事情に応じた幅広い歯科保健対策の中に「フッ素洗口」もその一部として、位置付けることが必要である。

以上の4点に集約されると思います。
 現状では8020の達成時期は2065年あるいは2071年(56〜65年後)という報告もあります。高齢化社会となり老後の食生活を快適にするためにも、歯を失う最大の原因である虫歯予防をより効果的に行うことが必要です。
 また、すべての子供たちが虫歯になるのを防ぐためにも、行政を含めた関係者の理解と協力体制の確立が必要です。 園・学校の先生方も、保護者の方もご多忙の中、少しでも歯の健康について関心を持たれ、少しでも多くの子供たちを虫歯から守るために積極的な行動を是非ともお願いしたいと存じます。


リンク先

世界保健機構(WHO)
国際歯科連盟(FDI)
アメリカ歯科医師会(ADA)

厚生労働省(MHLW)
日本歯科医師会

長崎フロリデーション協会

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資料集および参考文献

前述の回答の中で引用しました資料、文献やその他参考になる図書、資料の一覧をまとめておきますので、詳しくはぜひご参照下さい。入手できない場合がありましたら、歯科医師会までご連絡お願いいたします。

  1. 学校保健法 1958年4月
     この学校保健法を含めて歯科保健関係の法律書、要綱、通例等は以下にすべて収録されています。
     『歯科保健指導関係資料』(2000年版):厚生省健康政策局歯科保健監修 口腔保健協会 2000年3月

  2. 小学校 歯の保健指導の手引き(改訂版):文部省 東山書房 1992年4月

  3. 口腔疾患の予防方法と予防プログラム−WHOの指針−:口腔保健協会 1986年2月

  4. フッ素の安全性に関する質問主意書(第102回国会衆議院会議録 第12号):官報号外 1982年2月

  5. 猪調小学校歯科健診データ:昭和60年3月 北松歯科医師会

  6. う蝕予防プログラムのためのフッ化物応用に対する見解:日本口腔衛生学会フッ素研究部会 1982年

  7. 幼児期における歯科保健指導の手引き 平成2年3月
     これも以下に収録されています。
     『歯科保健指導関係資料』(2000年版) 厚生省健康政策局歯科保健監修 口腔保健協会 2000年3月

  8. 長崎県歯科保健大綱(歯っぴいスマイルプラン):長崎県 1995年10月

  9. むし歯予防におけるフッ化物応用マニュアル:長崎県・長崎大学歯学部・長崎県歯科医師会編集 1999年

  10. フッ素洗口の手引き:新潟県・新潟県教育委員会・新潟県歯科医師会・新潟県歯科保健協会編集 第6版 1994年3月

  11. これからのむし歯予防:飯塚喜一・境 脩・堀井欣一編 学建書院 1993年11月

  12. スタンダード口腔衛生:飯塚喜一・小西浩二・森本 基編 学建書院 1993年4月

  13. 集団を対象としてフッ化物局所応用マニュアル:日本口腔衛生学会フッ素研究部会編 口腔衛生協会 1988年3月

  14. 口腔保健のためのフッ化物応用ガイドブック:日本口腔衛生学会フッ素研究部会編 日本保健協会 1995年2月

  15. フッ化物応用と健康−う蝕予防効果と安全性−:日本口腔衛生学会フッ化物研究委員会編 口腔保健協会 1998年6月

  16. フッ化物に対する基本的見解:日本歯科医師会企画調査室 1971年2月

  17. 「フッ化物応用についての総合的な見解」:日本歯科医学会 1999年11月

  18. 「フッ化物応用(水道水へのフッ化物添加)に関する見解:日本歯科医師会 2000年12月

  19. う蝕予防歯磨剤の機能性について:日本歯磨工業技術委員会 歯界展望 第81巻6号 1993年6月

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